2019年12月~2021年4月の間にT-ICU社の遠隔相談サービスを利用した方へ「課題名:日本における遠隔ICU相談サービスに対するニーズの解明:質的研究」へのご協力のお願い
(1)研究の概要について
承認番号: 第M2021-354番
研究期間: 医学部倫理審査委員会承認後から西暦 2026年 3月 31日
研究責任者:所属機関名:東京医科歯科大学
所属部署:臨床医学教育開発学分野
役職:助教
氏名:那波伸敏
<研究の概略>
現場医師から受けた実際の電話相談またはビデオ相談の音声データの匿名化された書き起こしデータを用いて、現場医師が遠隔相談を用いた相談理由や、遠隔相談側に求めたアドバイス内容を質的研究の方法を用いて解析し、現場視点に基づく遠隔ICU相談サービスのニーズを検討します。
(2)研究の意義・目的について
遠隔ICU相談サービスは医師が医師の診療をサポートする急性期向け、遠隔相談サービスです。
この遠隔ICU相談サービスの普及状況については、アメリカでは2000年の遠隔ICU相談サービスの導入開始以来その数は増加の一途をたどり、現在はすでに約28%の病院が導入済みです。そして、実際に致死率の低下や入院期間の短縮、ケアの質の向上、安全性向上、ガイドラインの順守率の向上など、遠隔ICU相談サービスの有効性が多数明らかになっています。また、現場の医療スタッフもテクノロジーに関する不安や恐怖はあるものの、遠隔ICU相談サービスを受け入れることに対して好意的であることが確認されています。
一方で、日本では2017年に初めて遠隔ICU相談サービスが導入されたものの、遠隔診療を展開している病院は依然としてわずかであり、普及状況の実態は不明です。そのため、遠隔ICU相談サービスに関する研究も不足しており、遠隔ICU相談サービスの有効性に関する研究もまだ十分ではありません。
このように、アメリカと日本では遠隔ICU相談サービスの普及状況において大きく差があるだけでなく、ICUに関わる設備事情も大きく異なっています。具体的には、アメリカでは人口10万人当たり、ICU病床は34.7床であり、集中治療医は9人存在しています。しかし日本では、人口10万人あたり、ICU病床はわずか13.5床であり、集中治療医もわずか1.6人しかいません。さらに、集中治療医の地域偏在が著明であり、上位5都道府県に全集中治療医の40%が集中しているため、全国の約7割の病院が集中治療医を確保できていないという現状があります。
したがって、日本においてICU病床および集中治療医が不足しているのは明らかであり、この課題への解決策として遠隔ICU相談サービスが今後ますます重要な役割を担うことは容易に想像できます。しかしながら、遠隔ICU普及のために欠かせない、現場視点に基づく遠隔ICU相談サービスのニーズはいまだ解析されておらず、遠隔ICU相談サービスの発展・普及のための方向性が定まっていないのが現在の問題点であり、本研究で解決する課題です。
(3)研究の方法について
3-1.研究対象の選択基準
本研究では、遠隔相談サービスを行っているT-ICU社が保有している、業務上の品質管理を目的として収集されたデータを、研究目的で二次利用します。具体的には、関西・中部地方の2次医療機関5施設の集中治療を専門としない現場医師(医師数の合計:26名)と遠隔相談を行っている集中治療医との間の電話・ビデオ相談の書き起こしデータ(2019/12~2021/4、計70件、計約15時間相当)を用います。データは匿名化後に研究者に提供され、研究目的の分析を実施します。
3-2.研究対象の除外基準
該当しません
3-3.実施手順・方法
遠隔相談サービスを行っているT-ICU社が保有している、業務上の品質管理を目的として収集されたデータを、研究目的で二次利用します。具体的には、関西・中部地方の2次医療機関5施設の集中治療を専門としない現場医師(医師数の合計:26名)と遠隔相談を行っている集中治療医との間の電話・ビデオ相談の書き起こしデータ(2019/12~2021/4、計70件、計約15時間相当)を用います。元々の業務上の品質管理を目的として収集されたデータには、遠隔医療サービスを利用した医師の名前や病院名やサービスを利用した日付など遠隔相談サービスを利用した個人を特定できる情報が含まれているため、データは匿名化が行われた後に、研究目的で研究者に提供され、主題分析によって「相談理由」「現場医師が求めたアドバイス内容」をコード化して、分析を行います。そのため、匿名化データには遠隔相談サービスを利用した個人を特定できる情報は含まれていません。本研究では個別同意に代えて、本研究の内容を生命倫理研究センターホームページおよびT-ICU社のホームページ上に掲示することにより、研究内容を広く周知し、研究対象者が研究協力を拒否(Opt out)する権利を担保します。データ使用の拒否があった場合は研究者に提供するデータから該当する研究対象者のデータを除外します。ただし、研究の学会発表や論文発表後には除外ができません。
評価項目は、遠隔相談があった時間・日付・曜日、患者の来院方法、相談医師の専門、患者の病態、相談理由、現場医師が相談側医師に求めたアドバイス内容です。
(4)試料・情報等の保管・廃棄と、他の研究への利用について
【本学】
・試料・情報・記録等の保管場所:東京医科歯科大学臨床医学教育開発学分野
・保管責任者(常勤教職員):那波伸敏
・保管期間:本学規定10年
・廃棄方法:データは元不可能な状態に処理して廃棄します
・二次利用の可能性はありません。
・他の機関への提供(データベース登録含む)の可能性はありません。
【提供元機関について】
・提供元機関の名称、責任者名:株式会社T-ICU 中西 智之
・提供元での保管期間:指針規定3年以上
(5)予測される結果(利益・不利益)について
遠隔相談に関する研究が進むことで、遠隔相談の発展に貢献することができます。
見込まれる不利益・リスクはありません。
(6)研究協力の任意性と撤回の自由について
データ使用の拒否があった場合は研究者に提供するデータから該当する研究対象者のデータを除外します。ただし、研究の学会発表や論文発表後には除外ができません。
本研究は最新版の「ヘルシンキ宣言」および「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」(令和3年3月23日)を遵守して実施します。
(7)個人情報の保護・取り扱いについて
本研究では、遠隔相談サービスを行っているT-ICU社が保有している、業務上の品質管理を目的として保有しているデータが匿名化後に研究者側提供され、研究目的で2次利用されます。分析に際しては個人情報が含まれないデータを用いて行います。
(8)研究に関する情報公開について
研究結果は国内外の学会や論文として発表することを予定しています。
(9)研究によって得られた結果のお知らせ
研究により得られた結果等は対象者に開示しません。
(10)経済的な負担および謝礼について
費用負担はありません。また、謝礼もありません。
(11)研究資金および利益相反について
本研究は大学の運営費を用いて行われます。また研究を実施するにあたり特定企業との利害関係(利益相反)はありません。利益相反とは、研究者が企業など、自分の所属する機関以外から研究資金等を提供してもらうことによって、研究結果が特定の企業にとって都合のよいものになっているのではないか・研究結果の公表が公正に行われないのではないかなどの疑問が第三者から見て生じかねない状態のことを指します。本研究の実施にあたっては、株式会社T-ICUより匿名化データの提供を無償で受けることで、データ収集・管理を行います。本研究は、医学部臨床研究利益相反委員会に申告を行い、承認されています。
(12)研究に係るご相談・問い合わせ等の連絡先:
研究者連絡先: 東京医科歯科大学 臨床医学教育開発学 助教 那波伸敏
〒113-8519 東京都文京区湯島1-5-45
03-5803-5948(ダイヤルイン)(対応可能時間帯:平日9:00~17:00)
苦情窓口:東京医科歯科大学医学部事務部総務係
03-5803-5096(対応可能時間帯:平日9:00~17:00)
※他の研究参加者の個人情報や研究の独創性の確保に支障が生じない範囲内で、研究計画書や研究の方法に関する資料を閲覧することができます。ご希望の際は、上記の研究者連絡先までお問い合わせください。